有限会社タナカS・S

3. 障害者雇用の現状

(1)Aさんの仕事

勤務時間は8:20~17:30(休憩70分)、Aさんが従事している業務は、冒頭に前述した釣具(ルアー)の製造であり、会社の事業の中でも7~8割を占める主要事業となっている。その製造は、完成まで幾多の工程があるが、Aさんは、最初の工程、ルアー本体に部材(重り)を入れ、組み立てる作業を任されている。製品には、多くの種類があり、中に入れる部材も種類や量など違うため、間違いがあった場合はその後の工程にも大きな影響が出てしまうため集中力を要する仕事であった。訪問した際も仕事に従事中であったが、若干の時間をいただき話を聞かせてもらった。Aさん自身も高校を卒業してから初めての職場ということもあり、最初は不安でいっぱいだったが、定期的に様子を見に来てくれる学校の先生やジョブコーチの方の存在が大きく、更に常に声を掛けてくれる職場の方々の指導もあり徐々に仕事や職場にも慣れ頑張っているとのこと。「将来の夢は?」という漠然とした質問をしてしまったが、「今は毎日の仕事を頑張り、ミス無くこなしていきたい」との返事をいただいた。

障害のある従業員については、業務内容そのものよりも職場での人間関係がネックとなり不適応等が原因でストレスを抱え込んでしまい、それがもとで離職に至ってしまうケースが多い。多かれ少なかれこれは障害のある無しに関わらず、組織で仕事をする者にとって人間関係はどこでも発生するが、障害によりコミュニケーションが苦手(自分の考えを上手く伝えられない、相手の気持ちが上手く汲み取れない)な者にとっては大きな問題である。しかしAさんのように、周囲の同僚から声を掛けてもらい、昼食を一緒に食べる、会社の飲み会には参加するなど決して大げさではないが会社の一従業員として接してもらうことによって、自然にその課題が解消していると思われる。

通勤も以前はバスを利用していたが、仕事を始めてから自動車免許を取得し、今は自家用車で通っているとのこと、生活の幅も広がっている。


Aさん作業風景
Aさん作業風景


(2)工場長より

実際にAさんの業務を指導、管理している工場長からも話を伺った。

やはり採用当初は、会社として初めての障害者雇用ということもあり、障害のある従業員に対してどの程度仕事を任せていいのかわからない、という戸惑いがあったとのこと。また、学校の先生からはAさんに接する際の留意点として、「背後から大声で話しかけられることが苦手」との話を聞いており、その点については十分配慮して接したとのこと。会社としてAさんを採用するにあたっては、もちろん職場での戦力として一つの工程を担ってもらう必要性があったのは当然のことであり、社長を含め現場でも試行錯誤を重ね、また、支援に入っていたジョブコーチの助言もありAさんに従事してもらう仕事の工程を作り上げていったという。

ただし、最初から全てが上手く行った訳ではない。集中力を要する作業であるということは前述したとおりだが、社会人一年生のAさんが労働習慣を身に付けるにはやや時間がかかったのか、また、疲れが出てしまうのか勤務時間中に居眠りが見られたこともあったとのこと。今でこそお互いに信頼関係も構築され、スムーズにコミュニケーションはとれているが、当初は、注意一つにしてもどういった声がけをすればいいのか不明な点もあり、ジョブコーチへすぐに相談し、状況の改善を図ったとのこと。早急な対応により以降居眠りは見られなくなり、また、ジョブコーチ支援は工場長はじめ会社にとってもメンタル面での支えになったとのこと。


工場長と田中社長
工場長と田中社長



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