障害者助成金活用事例  No.121
企業内ジョブコーチの辛抱強く継続的な定着支援

1.  課題

第一ドライでは、芝塚取締役工場長が第2号職場適応援助者(ジョブコーチ)の資格を取得し、職場実習から採用・定着まで、就労支援機関とともに障害者の支援にあたってきた。その中から、以下にSさん(重度知的障害)の例を挙げる。

Sさんは、平成16(2004)年に特別支援学校を卒業、平成20(2008)年から高齢者介護サービス事業所で清掃業務に就いていたが、23(2011)年に離職、就労移行支援事業所エルピスあけぼのにて支援サービスを受けていた。

雇用を前提にして職場実習を始めたが、当初は声掛けしても視線を合わせられず、体調の変化も伝えられずにいた。手先を器用に使えず、指示に対して適切な行動をとることも難しく、不安のためか自信がなさそうな態度が目に付いた。共同生活援助を受けているグループホームの施設長によれば、以前の勤務先での辛い経験がトラウマとなっているとのこと。このような状況を踏まえて、工場での協調作業ができるよう対人スキルを身に着けて社会性を回復し、技能を習得していくことで自信を持って仕事に向かえるようにすることを採用時の課題とし、雇用後にジョブコーチ支援によってこの課題の改善を図ることとした。そして、ジョブコーチ支援計画書を作成し、以下の取り組みを始めた。


2.  課題解決の工夫・取り組み

○作業遂行能力の向上

ホテルシーツ等の業務用リネンを扱う工場内で、最初はひとりで機械に向かうタオル畳み作業から始めた。芝塚氏がマンツーマンで作業を指導しながら、作業に必要な声出しの基本から教えていった。少しずつ声が出せるようになり作業にも慣れてきたところで、2人1組になってガウン畳み作業を、職場に慣れ指示に反応できるようになってきたら、チームに入って枕カバーやナフキンの仕上げ作業を、更に自信を持てるようになってからは、スピードを要求されるシーツや布団カバーの仕上げ作業を経験させていった。リネン工場では、障害のある社員とない社員が同じ仕事に就いている。こうした職場に障害者が溶け込むためには、他の社員に能力を認めてもらうことが必要との考えから、Sさんに適性があると判断した作業については徹底的に教え込んで、障害のない社員と同じレベルまで引き上げた。


○障害特性やスキルと職務のマッチング

できないと予断せず先ず挑戦させ、早々な判断を下さず粘り強く指導していくことが大切なことだが、どうしてもできないことはある。例えば、布団カバーの裏返りや捩れを整えてロール仕上げ機に入れる作業があるが、Sさんはこれに四苦八苦していた。手順を改良してみたが、平面から立体を想像して整形することが難しいようで、結局他の人に代わってもらうことにした。こうしたアセスメントとジョブマッチングの的確さは、作業を熟知し職場全体の統制が可能な職責にある芝塚氏ならではのものだろう。


○フィードバックによる自信の向上

周りの目を敏感に感じとるSさんには、小さな成功体験の積み重ねとそれによって得た評価が自信になる。そのため芝塚氏からSさんに対して、随時成長していることについてフィードバックし、自信が持てるようにしていった。


○生活面への対応

勤務中の様子に気を配る一方で時間外の生活面にも配慮し、グループホームの世話人や障害者就業・生活支援センターエブリィのワーカー、また家族とも緊密な連携をとりながら、精神的な安定を図り、生活の乱れを修正していった。「うちは福祉じゃなく企業なんだからすべての面倒を見るわけにはいかないわよ」と言いながらも、芝塚氏は夜間も休日もSさんをはじめ障害のある社員からのコールやメールに応答している。その支援にフェイディングはない。

ナチュラルサポートの形成という点でも、他の社員との関係づくりに腐心し、障害者を包摂する職場環境を整えてきた結果、休憩中に談笑するSさんの姿が見られるようにもなった。


3.  取り組みの効果

ジョブコーチ支援による効果は、職場で円滑に職業生活を送れるようになったことにある。例えば、職場実習を経て採用された後も周囲に溶け込めず、しばらくの間は同僚と話すことも全く無かったSさんが、今では快活と評されるまでになっている。定着とは辞めないことではなく、働くことの意味を理解し働く喜びを感じられるようにすることであろう。企業内ジョブコーチの情熱的支援と冷静な配慮の成果は、何よりもSさんのひたむきな態度と和らいだ表情に表れている。


4.  活用した助成金

上記のSさんに対し実施した6か月間の職場適応援助884時間分(採用後の支援)について、第2号職場適応援助者助成金の支給を受けた。


ロール仕上げ機作業1
~障害のある社員もない社員も一緒に

ロール仕上げ機作業2
~シーツを手にするSさん(手前)

タオル畳み機作業
~職場実習を常時受け入れている


協力事業所:株式会社第一ドライ


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