株式会社障がい者つくし更生会

3. 具体的な取組とその効果

(1)固定概念を捨てる

専務取締役の那波氏に障害者雇用の取組についてお話を伺った。その中で見学者からの質問について話題になった。「なぜ障害種別ごとに部署を割り当てないのか」「障害者でも資格が取れるのか」等についてよく質問を受けるとのこと。障害種別ごとに部署を割り当てるということは、作業の構造化や支援をする際に障害種別ごとに担当が決まっている方が支援しやすいという雇用者側、支援する専門職側の発想である。また、障害者だから資格が取れないということも、私たちの思い込みによるところが大きい。確かに能力によって難しいこともあるが、逆に言えば能力があれば障害は関係ないことも多いのである。現につくし更生会の障害をもつ従業員31名のうち、23名が資格を有しており、そのことを証明している。

固定概念を捨てるということは、我々の中に存在する思い込みや枠組みを壊し、取り払うことである。

那波氏は見学者からの質問に対し「なぜ障害種別ごとに割り当てた方がいいのですか」「なぜ障害者は資格が取れないと思うのですか」と逆に質問を返すという。見学者の多くはその質問に対し戸惑い、やがて自分の中にある固定概念に気づくのである。

障害者だからできない、障害があるから難しいといった思い込みをすることで、個人としての能力を客観的に判断することが難しくなっていることはないだろうか。

那波氏の「我々は専門職ではないですから。素人でもこれだけできるのです」という言葉が印象的である。それは“障害”に焦点を当てるのではなく、“障害をもつ個人”に焦点を当てることで、その人がもつ能力をより引き出すことができているのではないだろうか。


(2)ひとりの個人として向き合い、良好な人間関係を築く

つくし更生会で最も大切にしていることは、障害の有無に関係なく、ひとりの個人として向き合い、関わることである。

精神障害者であるI氏は、つくし更生会に入社して5年目の従業員である。つくし更生会に入社する前は、いくつかの会社に精神障害者であることを隠して就職し、対人トラブルを起こしたり、薬を飲んでいることが会社にばれて退職を迫られたりしたこともあったという。その度に将来に対する不安や孤独感を味わったと話す。このままではどのような仕事、職場であっても続けることが難しいと考えたI氏は、障害者であることを隠さずに就職することを決め、その時にハローワークで見つけたのがつくし更生会であった。

入社した当時は、「誰も自分のことを分かってくれない」という気持ちから他の従業員に対し攻撃的、批判的な言動がありトラブルになることもあったという。そのような時、ひとりの聴覚障害をもつ従業員から「誰も分かってくれないと君は言うけれど、逆に君は僕の障害を理解してくれているのか」と言われ、はっとしたとのこと。障害を抱えた仲間が頑張って仕事をしている姿を改めて見て、周りに負担をかけていることに気づいたという。それから他の従業員の障害について勉強し、手話も学ぶようになった。

I氏によると、これまでの人生の中でこんなにも自分のことを気にかけて根気強く接してくれた経験はほかにないという。従業員の多くが障害を抱え、それぞれに大変さ、困難さを経験している。それまでは「自分だけ」と被害的に物事を捉えていたが、周りの従業員の働く姿を見て、またI氏と関わろうとしてくれる周りの姿勢から、「みんなが見てくれている」と感じることができ、やっと自分の居場所を見つけることができたと語る。さらにI氏は、「毎日、仕事があることが幸せ」「自分の存在意義を見つけることができた」と話す。責任のある仕事を担っているという想いと、他者から認められるという経験を通して、自信とやりがい、仕事の楽しさを取り戻すことができたようだ。

このようにつくし更生会では、ひとりひとりの従業員と根気強く向き合うことで個人のやる気を引き出し、能力を最大限に発揮してもらえるよう環境作りに取り組んでいる。那波氏は「どんな職場であっても、良好な人間関係が築けていなかったら従業員は気持ちよく働けないですよね」と語る。業務の効率化を図るためにも従業員がチームとして機能していることが重要であり、そのためには日ごろから円滑な人間関係を築いていることが必要なのだ。


(3)見学者や実習生の積極的な受け入れ

つくし更生会では積極的に見学者や実習生の受け入れを行っている。とくに実習生の受け入れについては、実習生を指導することで従業員のスキルアップにつながるので、力を入れている。実習生の指導については、まず従業員一名を指導係とし、その指導係と那波氏で指導する。指導する中で指導係となる従業員自らが自分の得意なこと、苦手なことを自覚するとともに、実習生が成長し、変化していく過程を見ることで、職業人としての自覚や自信につながっていく。

また、見学者の対応も部署ごとに障害のある従業員が担当しており、業務内容の説明や質問への応答を行っている。自信にあふれた笑顔や仕事に誇りを持つ姿勢からは、障害者ということを一切感じさせず、見学者の多くが驚くそうだ。また、障害者自身も、多くの人に自分たちの働く姿を見てもらい、評価を受けることで仕事に対する誇りと自尊心の回復につながっている。

つくし更生会への見学者は、障害者、保護者、支援者、教育者、企業、一般と多岐にわたっている。中には障害者雇用を検討する企業もあり、障害者と障害のない者が共に働く姿を見て、取組の考え方を知ることで障害者の可能性を感じ大切なことに気づかされている。


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