医療法人社団敬愛会

2. 障害者雇用の取組み内容

(1)雇用に至るまでの状況

  1. 事業所見学

    当事業所からの新たな方向での障害者雇用の相談を受けて、ハローワークは地域の障害者就業・生活支援センターと就労移行支援事業所等に事業所見学実施の情報提供を行った。その結果、2回実施された事業所見学に3機関の登録者や利用者が10数名参加した。

    その際に、光武看護部長と木塚看護師長から、食事の配膳・下膳、お茶出し、エプロン洗い、清拭用のタオルの準備、清拭後の片付け、病室の環境整備、ベッドメーキング、ポータブルトイレ掃除、入院する患者のベッドの準備、患者の案内等の業務のなかで、障害に応じてできることを行って欲しいという説明を行った。

    当事業所としては6人程度を雇用し、2階~4階の入院病棟において各階専任で上記の業務を行うことと構想していたが、見学会に参加する障害者の障害種別や程度を予め限定しなかったこともあり、誰がどのようなことができるのかも分からない状況での不安なスタートであった。

  2. 職場実習から雇用まで

    事業所見学後、当事業所で職場実習をしたいと希望したのは4人であった。すぐに当事業所とハローワーク、障害者就業・生活支援センターの3者でケース会議を行った。ケース会議では希望した4人の障害特性を確認し業務の選定を行った。実習の最初の業務は病室の環境整備、患者さんへの清拭後の片付け(タオルを集配場所へ持って行く、洗面器を片付ける)を行わせ、状況を見ながら、清拭用のタオルの準備、ロールシーツ(シーツの下に敷くディスポシーツ)の準備といった業務を増やしていくことにした。

    一人が途中で辞退したものの3人(知的障害:2人、精神障害:1人)が予定していた1週間の職場実習を終え、全員から「就職したい」との意向を確認し、3人共にトライアル雇用となった。

(2)業務内容と勤務状況

業務の順番や組み合わせに関しては、職場実習中もトライアル雇用期間中もハローワークや支援を担当した障害者就業・生活支援センターの担当者と相談しながら試行錯誤を繰り返した。現在は2階~4階の入院病棟のうち主に4階の入院病棟で、次のような業務を行っている。


  1. 業務内容
    • 食堂内での作業
      エプロン洗い、テーブル拭き等
    • 清拭後の片付け、清拭用のタオルの準備
    • ロールシーツの準備
    • ポータブルトイレ掃除
      トライアル雇用期間中に追加したもので、4階に加え2階も行うようになった。
    • 病室の環境整備
      ベッド柵やドアの取っ手等、よく手が触れる部分(上拭きと呼ばれる)とベッド周囲の柵の下やテレビ台の下等(下拭きと呼ばれる)の拭き掃除、各病室入口の消毒液設置棚や廊下の手すり拭き。この作業は、初めは重症患者の部屋は行っていなかったがトライアル雇用期間中に追加し、4階に加え2階も行うようになった。
  2. 勤務状況

    雇用された3人が最終的にどの程度までの作業ができるのか、当事業所が望んでいるところまで進むのかも分からなかったため、無理のない範囲から開始することにし、3人と当事業所、支援機関で話し合って、1日4時間・週5日間の勤務から行った。ただ、3人共に長く働くことを希望していたので、状況を見ながら勤務時間を延長していくことにした。勤務時間が延びて1日6時間勤務になったのは今のところ1人である。それ以外の2人は、もっと働きたいとの意欲はあるが、腰痛等体調不良があるため様子を見ている。

(3)働く障害者の様子

  1. 3人のチームワーク

    雇用当初は前述の全ての業務内容を3人一緒に行っていた。3人一緒に行うようにしたのは、看護助手によるシーツ交換等の作業は、効率良くできることから2人一組で行うことが多く、同じようにチームを組んだ方が良いだろうと考えたからである。

    例えば、上記の病室の環境整備の業務を実施する際、どの病室が終わったかどうかの確認のためにチェック表を用意した。ケア中や面会中の病室は後に回しているが、このチェック表のおかげで、互いに確認し合い忘れることなく作業を進めていくことができていた。このチームワークはトライアル雇用から常用雇用へ移行するかどうかの話し合いの際に高く評価された。

    今では作業にも慣れ、本人たちからの希望もあり、病室の環境整備は効率良く作業を進めるためにペアで行っているが、他の作業は単独で行っている。

  2. 障害者自身の感想
    • ①Aさん:50代女性、精神障害

      ひとり暮らしであるため、「生活があるから、頑張らないといけない。体調を見ながら頑張っていきたい」と話している。患者から話しかけられるのが好きで、笑顔で会話をしている。廊下でリハビリをしている患者とすれ違うと、「リハビリ、頑張って下さい」と声をかけている。

    • ②Bさん:50代女性、知的障害

      「最初は、病院での仕事と聞いて難しい仕事をしないといけないというイメージがあった。事業所見学の時にたくさんの仕事を言われて不安だったが、自分にできることを与えてもらって良かった」と話している。目標は「60歳までは続けること」であり、最後の職業生活だと思って就職活動を行った。3人の中では「一番年上だから」と張り切っており、他の2人からも頼りにされている。

    • ③Cさん:40代男性、知的障害

      「分からないことがあれば看護師さんや助手さんが優しく教えてくれるので、困ることはない。体も慣れてきたので良かった」と話す。病室が多い為に環境整備では目標を決めて行っているが、常に目標以上の成果を目指して丁寧に意欲的に取り組んでいる。


    環境整備は上拭きと下拭きに分かれてチームプレイ
    環境整備は上拭きと下拭きに分かれてチームプレイ

  3. 現場の体制作り

    3人それぞれのできるところを評価したり、3人の希望や意見を聞いたりと、当事業所の中で調整役となっているのが木塚看護師長である。3人から体調の相談や通院等でのシフトの相談を受けたり、業務の進捗状況の確認、業務全体の流れを見ながらの業務調整等のほか、鈴木統括事務部長や光武看護部長への相談、現場への指示、支援機関への連絡等、3人が安心して働けるような環境や体制作りにも熱意を持って取り組んでいる。「新しいシステムを作る時は大変なこともある。でも、きっと大丈夫」と言い切る。


    木塚看護師長との業務の確認
    木塚看護師長との業務の確認

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