株式会社ベジタブル・ウェル

3. 取組の概要と効果

(1)一人ひとりのケースに寄り添う生活サポート

知的障害の場合、仕事面の指導とは別に、生活面へのサポートが必要になるケースが少なくない。例えば、お金の管理ができない人には管理方法を指導したり、会社で貯金の管理を手伝うケースもある。

ある事例では、本人が入居しているグループホームから「帰宅時間が合わないために同居者と会えず、孤独になっている」という相談があった。そこで、1時間早く仕事を上がらせて帰すようにした。結果として、表情も明るくなったという。

別の事例では、「アルバイトをしたい」という社員がいた。「家族で働いているのは自分だけなので、もっと稼がなくてはいけない。仕事が終わってから夜間のアルバイトをしたい」という。

社長が本人と話してみた。「君の仕事は何だ?ここで8時間仕事をすることだろう。夜のバイトをすれば最初は稼げるかもしれないが、やがて疲れて本業がおろそかになっていくよ。だったら、ここの仕事を1~2時間増やしてみてはどうだ?」と。その言葉の背景には、夜間のアルバイトやその移動による事故への心配があった。

彼はベジタブル・ウェルで残業や休日出勤をするようになり、家族からも喜ばれているという。鶴上社長は次のように語る。「もちろん、日を決めてバランスを考えながらやっています。就労上の問題もありますが、彼らの家庭にも事情がある。それをなんとかみんなで考え、乗り越えていく。これもまた障害者雇用の現実だと思いますね。」


(2)本人や家族とのコミュニケーションと判断の所在

本人たちが悩んだり、話したいことがある時、障害のない社員2名がサポート役となる。何らかの異常を感じた時には、すぐに社長へ報告し、その都度社長が判断をする。その際、判断を行うのは社長だけである。

「障害者の場合、個人生活に踏み込むケースもある。それは社員が判断するには重い問題であり、判断を誤ると大きな禍根を残す。余計なストレスを背負わせないためにも、危険を防止する意味でも、判断は経営者である私がすべきだと考えています」と、鶴上社長は語る。

また、半年に1度、両親と話し合いをする。本人の現状について会社側から報告し、生活改善してほしいことを伝えたり、協力して取り組めることなどについて話し合う。


(3)業務上のサポート

仕事上「苦手」なことはそれぞれにある。例えば数量を数えること、製造ラインなどの変更に柔軟に対応すること、などである。「苦手」も一人ひとり異なり、それゆえ対応策も画一的にはできない難しさがある。ここではベジタブル・ウェルの取り組みの中から3つ紹介してみる。


  1. 配置転換による「適性」の発見

    誰であっても「社会人としてやっていける」と判断して採用するが、思ったほど能力が発揮されない場合もある。

    Aさんの場合、パック詰めの作業を担当していたが、パックが変わるとまったく対応できなかった。「もう無理か」と思われたが、試しに検品作業を担当させてみたところ、高い適性を示した。今や「これはぼくの仕事だ」と責任感を持ち、障害のない社員たちからも高く評価されている。

    どの作業に適性があるのか、やってみなければわからない。障害の有無に関わらず、適性は重要な問題であるが、とりわけ知的障害のある場合ではいかに粘り強く適性を見つけていけるかが継続的な雇用の大きな要因となるといえる。

  2. 作業に関する基本情報の「見える化」

    ベジタブル・ウェルでは作業手順を分かりやすく表記して壁に貼っている。売場によって異なるパックごとの適正グラム数も壁に貼る。障害者雇用を始める前にはしていなかったことだ。

    知的障害者にとっての分かりやすさが目的だったのだが、結果的には障害のない社員たちにとっても分かりやすい環境づくりになった。いわゆる「見える化」を進め、覚えることが少なくなることでミスも減り、仕事に集中できるのである。

    障害者雇用によって、当たり前だと思っていた環境を見直すきっかけが生まれたといえるだろう。


    作業場の貼り紙。左は人間関係へのアドバイス。右はパックごとのグラム数が貼ってある。
    作業場の貼り紙。左は人間関係へのアドバイス。右はパックごとのグラム数が貼ってある。

  3. 生産計画の「見える化」

    ベビーリーフの袋詰めは1日中同じパックを生産しているのではなく、最低4~5種類かそれ以上の商品に対応しなければならない。当然、商品ごとに袋が異なり、グラム数も異なる。どの商品を何パックというオーダーは毎日、電話かファクスで受信され、当日の生産計画が立てられる。

    そこで、ベジタブル・ウェルでは、壁の棚に必要な商品パッケージを必要な数量だけ並べることにした。つまり、今日の何時までに商品Aを500袋、商品Bを1000袋、商品Cを2000袋製造し、何時の集配に間に合わせるということを、口頭や文書ではなく、現物のパッケージで指示されるのである。勘違いやコミュニケーションのずれによるミスを防止する効果があると考えられる。


    このような取り組みは結果的に障害のある人のためだけではなく、企業全体の就労環境整備につながっているのではないだろうか。「パックごとのグラム数」も「本日の生産計画」も「見える化」されていれば、間違いや失念によるミスを減らし、スタッフ間の誤解やそれを解くための手間を減らす。障害者雇用への環境整備が業務全体の効率化に寄与しているのだといえる。

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