有限会社親生ビルサービス

2. 障害者雇用について

障害者の雇用は、平成22(2010)年に県より特別支援学校の生徒の作業学習の受け入れを打診されたことがきっかけである。その際に高等部1年生の肢体不自由の生徒を受け入れ、以後在学中3年間の作業学習において清掃業務の指導をし、生徒の対応能力に期待できるものがあったため、卒業時に採用した。社長の和田氏はそのときより特別支援学校と関わりを持ち、先生たちと会話する中で障害者の指導や接する態度について多くを学んだ。最も強く印象に残ったのは、先生たちが「一人の人間として考えている」という当たり前のことだった。そして、実際に受け入れ「人は接してみないとわからない」と改めて感じたという。その後は、新卒の障害者でもベッドメイク、清掃、そしてビル・メンテナンス等で3ヶ月の研修を実施し、適応できることを確認できれば採用している。図1には清掃作業の様子を示す。


図1  清掃作業の様子
図1  清掃作業の様子

当社の障害者雇用で他の企業と大きく異なるのは、障害者が作業する現場が他社のビルや設備であり、障害者雇用について自社の従業員だけでなく、他社の従業員、さらには他社の設備の利用客の理解も必要になることである。そのため、当初は障害者が現場で作業することを拒む事業所もあったようだ。しかし、入念な準備、十分な訓練、そして実際に障害者の作業や仕事ぶりを見てもらうことで、徐々に理解は進み、現場での受け入れが少しずつできるようになってきたという。

ホテルの客室清掃を例にすると、ホテルでは「ルーム・インスペクション」という客室の清掃仕上がり状況や設備・備品・消耗品の状況のチェックが行われているが、当社ではこのチェック項目を自社独自に289項目作成している。その中でそれぞれのホテルにあったインスペクション項目を選び、精度の高いマニュアルを作成し、ホテルの客室係とハウスキーパーなどによってトリプルチェックを行っている。ホテルの価値は8割以上が客室と言われ、プロ技術者集団として売る部屋、売れる商品を作らなければならず、障害のある従業員に対してというだけでなく、従業員全員に対しても抜けのないマニュアル作成を行っている。

障害のある従業員への指導は、ベッドメイクなどそのノウハウを掴めるように、訓練中は一人のベテラン従業員を指導員として担当させている。客室清掃は13時から17時の間に行わなければならないなど、時間の制約があってスピードも要求される。正確に早く行わなければならない客室清掃だが、現在雇用している障害のある従業員は3カ月の訓練で8部屋を作れるようになったという。

課題としては、聴覚障害者の清掃現場での雇用である。清掃作業は、ホテルの利用客に会うなど人に見られる仕事でもあり、接客マナーが必要となる。聴覚障害者の場合、トイレ清掃の最中に「トイレを使っていいですか?」と利用客に言われても気づかない可能性がある。外見ではわからない聴覚障害は、利用客にはほとんど配慮されることがないため、ホテルへのクレームにつながることが心配される。通常の生活の中でも課題とされるこの問題は、解決する方法を探ってはいるが、まだ解決できず雇用まで至っていない。


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