有限会社親生ビルサービス

3. 取り組み内容と効果

当社社長の和田氏は、企業内教育を基本とし、ビル・メンテナンスで最も大切なものは従業員であり、財産は「従業員」と「思いやり」であると考えている。ビル・メンテナンスの仕事は人でなければできない技術職の仕事だからである。そのため、従業員全体に対して様々なサポートと工夫をしている。従業員の表情を見て声かけすることは平素から心がけ、また毎朝6時に出社し様々な悩みを打ち明けてくる従業員の相談に親身になって対応している。従業員との信頼関係がとても厚い。そして、職場の環境(この場合は現場となるお客様の施設のこと)を変えることはできないが、「人は変えられる」という思いがある。人が持つ悩みも変えることができ、変えることのできない現場であれば人が変わるか、それに合う人に変わればよいと考えている。

障害のある従業員を雇用することになっても、これまでしてきたように従業員として同じように対応している。障害者雇用に当たって、従業員の中には一瞬戸惑いはあったようだが、そのうちにやさしい言葉でフォローする従業員も現れ、障害者に従業員が成長させられた気がするという。

障害のある従業員が困っているといち早く気づいてサポートをしてくれたのは、それまであまり協調性がないと思っていた従業員だった。障害者と一緒に仕事をするうちに気づきや思いやりを見せてくれるようになった。ミスせずスピード感を持って作業に当たる現場では、従業員に大きなストレスがかかりイライラした現場になりがちだが、障害のある家族を持つ従業員が障害者と一緒に作業をする同僚に「怒らないで、叱ってね」「わからなかったら教えてね」と自然にフォローする姿もあった。さらに、グループで作業する現場では、それまでもトラブルはなかったのだが、障害者がメンバーになることで障害者から「他人を思うやさしさ」を教えてもらった。障害のある従業員をサポートしようという姿勢がみんなの中に生まれ、従業員間にも強いつながりができた。

客室清掃のクレーム処理では実際に次のようなことがあった。客室から出たゴミの中に、栄養剤の入ったアンプル(液体の薬剤など入れるガラスの入れ物)が空ではあったが入っていたというクレームである。だれが混入させたのかは分からないが、非常に責任感の強いまじめな障害のある従業員が自分だったかもしれないと一人落ち込んでいたという。そのとき、その姿をみた従業員全員が手分けして混入の原因を究明するなど、本人に安心感を与えることができるよう対応にあたったそうだ。

社長の和田氏は特別支援学校から要請されて「仕事とは何か?」といった講話をする。その際「積極的に社会に出る勇気を持つこと、自分が変われば他の人も変わる、そして障害があっても日常的なことはできる」と、日常の中で基礎的な生活スキルとコミュニケーション力を獲得することが自立につながることを生徒たちに強く呼びかけている。

併せて、障害者を採用するときには、和田氏は親子を集めて講話をしている。子供は積極的に挑戦しようという気持ちはあるが、親は子供のできないことだけに目が行き、できることに挑戦させないで守られた環境に進ませようといった風潮があるからだ。

宮崎県内の特別支援学校でもこういった思いの取り組みが行われている。県の教育委員会の主催で「特別支援学校チャレンジ検定」として始まっている。これは特別支援学校高等部に在籍する生徒の作業学習の意欲の向上や将来の自立に向けた夢や希望の実現をめざすために、メンテナンスや接客などの職業技能について県教育委員会が独自の認定資格を開発し、それらの職業技能の級の認定を行うものである。社長の和田氏はこれらの活動に積極的に協力し、「メンテナンス」の職業技能の審査員として参加している。

その他、社会人の障害者も参加し、職場で培った技能を競うアビリンピック大会(障害者技能競技大会)にも積極的に協力している。この大会は、障害者の職業能力の向上を図るとともに、企業や社会一般の人々に障害のある人々に対する理解と認識を深めてもらい、その雇用の促進を図ることを目的として開催されるもので、県教育委員会で実施している「特別支援学校チャレンジ検定(メンテナンス)」の上位の大会になる。宮崎県大会、全国大会、そして国際大会まで実施される。社長の和田氏は、九州ではまだ実施されていなかった「ビルクリーニング」の種目を宮崎で初めて開催することに尽力し、現在も宮崎県大会の競技委員として活動している。図2はアビリンピック宮崎県大会ビルクリーニング競技の様子、図3は和田氏らが作成したビルクリーニング競技の評価シートの一部である。当社の障害のある従業員もこのビルクリーニングの種目に参加している。


図2  アビリンピック大会の様子
図2  アビリンピック大会の様子

図3  ビルクリーニング競技評価シート
図3  ビルクリーニング競技評価シート

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