医療法人蘇春堂  球磨病院

3. 取組の内容

当病院がどのように障害者雇用を行っているか、それは個々の対策や工夫を取り上げるよりも、ケースごとに見ていった方が適切であると思われる。というのも、それぞれの人材に対してどのように接したのかが重要だと思われるからである。なお、当病院以外の病院で働くケースも紹介する。


(1)介護ヘルパーでの雇用

ア.Aさん[中途採用・内部障害]

介護スタッフとして働きたいと求人に応募してきたAさんは、重い病気を抱えていたのだが採用となった。Aさんに合わせた勤務時間が設定され、本来介護スタッフの場合は夜勤があるのだが、夜勤のない勤務形態も認められた。また、水曜日には治療を受けるということで水曜日を休日にした。このような事例に、本人の状況によって柔軟な雇用を行うという当病院の採用に関する基本姿勢が示されている。

当病院の障害者雇用にとって、蘇春堂というグループがあることは有利に働いている。多様な職場があるので、本人に合った適材適所を考えていきやすいからである。実際に、ある職場(職種)でうまくいかなくて配置転換したらうまくいったという例は少なくない。

イ.Bさん[復職・下肢障害]

Bさんはもともと当病院に介護スタッフとして勤務していたが、障害を発症して手術を受け、1年間の休職の後に復職したいと申し出た。しかし、重度の障害が残り、患者の身体を抱えるような業務は行うことができない。

できるだけ今まで勤務していた職場で働きたいという本人の希望を尊重し、看護師長及び介護のリーダー達が話し合い、朝日野会本部にも伝え、介護ヘルパーとしてではあるが入浴前後の衣服の着脱など比較的軽い作業を担当してもらうということで了承を得た。

また、更衣室やエレベーター等施設利用についても柔軟な配慮が行われている。当病院の場合、介護ヘルパーの更衣室は管理棟の3階にある。当然、エレベーターを使用することになるが、介護ヘルパーが出勤する8時半にはまだ管理棟のエレベーターが動いていない。そこで、Bさんの場合は病棟の更衣室を使えるように配慮してある。病棟のエレベーターは常に使用できるし、施設間の移動もせずに済むからである。

介護ヘルパーの業務には肉体的な負荷が高いものが含まれる。したがって、新規採用にあたって重度の障害を負った人を選ぶことはほとんどないだろう。しかし、Bさんの場合はもともと介護職として本施設で働いていて、その後、障害を負ったという経緯があった。その職場復帰をサポートしていきたいという病院側の優しさが、雇用の継続、そして働き方への配慮といったことに反映されているのだと言える。

「長く一緒に働いていた仲間だから、という意識はあるのかもしれませんね。復職される際にはけっこう考えましたけど、働きたいという仲間にダメと言うような残酷なことはしたくない。可能な限り、本人の意を汲んであげたいと思いますね」と看護部長は語る。

しかし、組織としての判断だけではこのような対応はうまくいかない。一緒に働く同僚たちの理解や協力がなければ仕事を続けていくことはできないだろう。

「復職した当時は久しぶりの仕事で大変だったと思いますが、今は周りの協力もあり、身体も慣れてきたようですね。職場に溶けこんでおられるのが分かります。互いにサポートし合うという想いが周りのスタッフ達の中にも共有されているのではないですかね」と看護部長。

ウ.Cさん[新規採用・内部疾患]

光生病院に勤務しているCさん(男性・介護ヘルパー)の場合は、内部疾患(難病)を羅患しており、週1回は病院で治療を受けなければならない。本来なら仕事ができる状態ではなかったのだが、本人に「介護の仕事をしたい」という強い意志があり、病院として雇用を決めた。

最初は「人並みには働けないので、仕事を休むことも多くなるだろう」ということであったが、勤務し始めてみると、週1回の治療以外に休むこともないので、支障なく働くことができている。また治療のための休日の代わりに土曜日に出勤するなどして、週40時間は勤務できているという。


(2)総務スタッフでの雇用[Dさん 新規採用・肢体不自由]

Dさんは当病院が改築された13年前(平成13(2001)年)に採用された。以来、総務で働いてきたが、職場に恵まれてきたと感謝している。

Dさんは次のように語る。

「職員駐車場は歩いて10分ほどのちょっと遠くにあるのですが、足が悪いので配慮していただき、特例的に近接した駐車場を使ってもよいことにしていただきました。職場の雰囲気もよく、みんな温かいですね。また、まわりの皆さんの配慮もありがたいのですが、障害を持つ側から『自分はこの作業ができないから、こういうふうに手伝ってほしい』といった意見を、当病院では正直に言うことができるのが素晴らしいです。きちんとした意志を持って、きちんと伝えることができる職場環境があるというのは、とてもいいことだと思いますね。」


(3)子育て中の若いお母さんの雇用(障害のない方、Eさん、看護助手)

Eさんの場合は障害者ではなく、幼児を育てる子育て中の若いお母さんである。しかし、あえてここで取り上げておきたいのは、障害者支援と子育て支援は社会的弱者へのサポートという意味でつながっており、当病院においては正に同様の柔軟さと配慮をもって雇用が捉えられていると考えるからである。

Eさんは、ハローワークの求人募集(看護助手)に応募したのだが、まだ子供が生後2ヶ月だというので一度不採用となった。実際、同じ職種に多くの人が応募してきており、そのEさんのようなケースでは無理からぬ判断であろう。

普通ならそこで終わるはずなのだが、それを聞いた本部から現場に「なんとか働ける場を探してみて」という指示が来た。現場でも「小さい子供を抱えてでは難しいのではないか。子供が病気になった時の対応等もあるし・・・」と心配する声があったが、本部からは「やってみなければ分からない」という返事。結局、採用となり、現在も問題なく働き続けている。事実、「やってみなければわからなかった」のである。

当病院では今年もまた1名、生後6ヶ月の子供を持った女性を、適材適所に配慮し採用している。子育て中の若いお母さんを支援するということは、子育てと就労が相反することではないことを示すことであり、やがて子育てが落ち着いた後も見据えてしっかりと働ける人を育てるということでもある。人を雇用するということは決して一時期の関係ではなく長く続くものだという考えが、ここには定着している。


球磨病院ナースステーション
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球磨病院総務部
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