医療法人蘇春堂  球磨病院

4. まとめ:弱者への支援の心と地域に根ざした医療

医療法人蘇春堂や同朝日野会における雇用の考え方とその実践ぶりをみていくと、経営姿勢として、子育て支援、障害者支援という視点をしっかり持っているということがよく分かる。求人している職種に適合しないのであれば採用しないのが「ふつう」である。あえて「その人が働ける場所を探す」というのは、明確な意識がなければ実行できない。

組織にこのような姿勢があると、「働く側の意識も変わっていく」と看護部長は言う。子育てをしている女性や障害を持った人が働ける場所がどこかにないか、意識的に探してみるようになる。実際には働き始めても合わずに辞めていく人もいる。でも、やってみなければ分からない。最初から「この人には無理だ」と思い込まないようにする。これは個人にとっては大きな意識の変化であるし、このように個人の意識を変えていく組織運営のあり方にあらためて驚かされる。

そこにあるものとは、冒頭に述べたように、医療法人蘇春堂や同朝日野会にある地域の中核病院としての役割意識であろう。つまり「地域に根ざす」という認識であり、「地域の人々との関係を大事にし、その関係を基礎としてこそ役割を果たしうる」という認識である。このような地域コミュニティを大切にする事業体において、「雇用」とは地域の人々とつながる上での要である。

地域の中核病院であろうとする当病院にとって、地域の雇用を大切にしていこうという姿勢は基本的なものであって、組織の体質といってもよい。これが当病院の障害者雇用をごく自然で柔軟なものにしている要因なのだと思われる。そして、球磨病院及び蘇春堂、人吉市の市民にとって幸運であったのは、新たな経営母体となった医療法人朝日野会もまた同じ基本姿勢を持っていたことである。

執筆者: 株式会社エアーズ  森  克彰
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 アンケート入力画面へ
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