さつきコーポレーション株式会社

3. 取組の内容

(1)知的障害者雇用の取組

当社に勤務する知的障害者3名全員が療育手帳の所持者で、その認定区分はいずれもB1である。勤続3年のAさんと同2年のBさんは雇用保険の被保険者であり、ホームヘルパー2級(現在の介護職員初任者研修)の資格所持者である。もう一人のCさんは勤続1年半。家庭の事情で勤務時間が限られており、資格を持たないため、介護補助業務をこなしている。

障害者を雇用するにあたって、事前に社内全体、特に職員のコンセンサスを取り付けておくことは必要不可欠であろうと思うが、これは口で言うほど生易しいものではない。当社では「障害者と共に働くこともできないで、利用者に心を込めたサポートができるか」という思いを施設長、職員皆で共有することで乗り越えてきたという。

ア.日常業務の指導と業務の定型化

知的障害者に対してどのような方法で仕事を覚えていってもらったのか。

まずは専任の指導役(=相談役)を選定し、できること、できそうなことからとにかくやらせてみるのだという。そして、うまくできれば、きちんと褒める。褒められることで障害者は喜び、自信を持つ。こうして少しずつ次の仕事にチャレンジしていくことで、着実にできる仕事の範囲を広げていくようにしてきた。しかし、時には指導役を飛び越えて施設長の下に駆け込み、種々訴えてくる場合もあるが、その時は怒らず諭して指導役の元へ返すそうである。

介護従事者の日常業務は、例えば毎日の「朝から昼までの作業」、「昼から夜までの作業」、「トイレを中心とする清掃の作業」、月単位の「清掃の作業」のように、作業項目を作業単位で洗い出して一つの括りとしている。

ユニットと呼ばれるこの括りは上記の例のように複数存在し、日ごとにローテーションでそのユニットの作業担当が割り振られている。自分がその日に行なう仕事はもちろん、どの日にどの業務を担当するのかはこの割り振りを一覧にした当番表(業務表)を見れば一目瞭然であり、予定が事前に分かっているので知的障害者も安心して働くことができる。ただし、予定が急に変更になると障害者が戸惑ってパニックなどのトラブルにつながる恐れもある。このため、予定変更の可能性がある場合は、前もって予定変更がありうることを予告しておくことでトラブルの芽を摘んでおく。


当番表(業務表)
当番表(業務表)


イ.ヒヤリ・ハット報告書の導入

業務日誌などはどうしているのであろうか。写真は、知的障害者が実際に記載したヒヤリ・ハット報告書である。

採用当初に提出された報告書は、報告書としての体をなしていなかった。しかし、本人なりに一所懸命書いてくれたことであるから、これを一切否定しないことからスタートした。そして、感情だけの、心からあふれるままに書かれた報告書を手にしながら、怒らずに、「これはあなたの気持ちでしょ。何が起こったの」と優しく問い掛け、障害者から話をゆっくりと引き出していき、「それを記入すればいいのよ」と教えた。これを繰り返しているうちに、自力でこうした報告書も書けるようになった。

また、勉強会などにおいて抄録を残す作業をすることもある。こちらは、障害のない者が記載したものをそのまま筆写するなどしながら、時間をかけて少しずつ身につけてもらう方法を採っている。

その他仮定の話であるが、利用者やその家族の中に、障害者の仕事振りについてあからさまに不満をぶつける方、障害者本人を非難する方、障害者の就労に否定的な発言をされる方がいる場合は、そういう攻撃的な発言が障害者の耳に届かないよう万全の措置を講ずることになるだろうと言う。


ヒヤリ・ハット報告書
ヒヤリ・ハット報告書


(3)精神障害者の雇用

当社が男女一人ずつ、計2人の精神障害者を雇用したのは半年ほど前になる。今のところは雇用保険の被保険者には該当しない短時間の勤務形態である。

精神障害者の雇用は知的障害者も精神障害者も同じ「人」、平等なのだからというのが理由の一つでもあったらしいが、あえて精神障害者雇用に踏み出した。障害を抱えるまではバリバリ働いていた方なので、「つまずき」さえ取り除けば、障害のない者と変わらない働きができるであろうという期待もあった。

社内では慎重論も出たらしいのだが、知的障害者の場合と同様に、正確には知的障害者も含めた全職員と同じように、「いいことはいい、悪いことは悪い」という善悪を峻別する従来通りの指導で臨めば大丈夫だろうし、それしかないという結論に落ち着いた。

実際に雇用してみて、知的障害者に比べ精神障害者の雇用は難しいと感じていると言うが、もちろん、それで心が折れてしまうこともない。

ある時、精神障害者が知的障害者に対して心無い発言をしたことがあった。精神障害者に対してどこが悪かったのか、何が許されないのかをきちんと伝え、厳しく叱った。精神障害者も理解してくれたという。

最初の取材時、長期欠勤中だった精神障害者が、次の取材当日に元気に復帰出勤された。施設長以下全員が笑顔でこれを迎えた。急がすことなく、丁寧に粘り強く復帰を説いてきたことが功を奏したようだ。


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